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前回は、南米開教について書かせていただいたが、今回は南米での2週間の生活について書いていきたい。
ブラジルの他、現地のお檀家さん達と共にアルゼンチン、パラグアイと2カ国も訪問したが、3カ国とも、肉、特に牛肉をよく食べる国である。私自身も肉は大好きで、むしろ得意であり、赤身肉がメインの3カ国は、お腹にしっかりと貯まって最高ではないか、と考えていた。確かにおいしいのである。
アルゼンチンでは、アルゼンチン産の牛ステーキ1ポンド(450g)とアルゼンチンワインに舌鼓を打った。特にアルゼンチンワインはアルゼンチン国内では安くても、ブラジルなどの周辺国では高級ワインとなる。案内をしてくれたお檀家さん達は、箱で買って2週間楽しめ!と言っていたのだが、南米2日目の私達スタッフは、いやいやそんな飲めないと、6本しか買わず、後で足りないと後悔をすることとなった。
パラグアイは、ブラジルから徒歩で国境の橋を渡って入国した。スリが多いので身一つで行くようにと言われて、スタッフ一同戦々恐々と向かった。国境の町は、様々な免税店が建ち並び、ブラジルよりも安く買えるので、ブラジルからの買い物客が多い。その買い物客と荷物を運ぶタクシーやバイク便の運転手も多く、食べ物屋がたくさんある。道ばたには屋台もあり、肉を焼く良い匂いが立ちこめていた。ただ、我々はスリを恐れ、財布は置いてきてしまったので、匂いを楽しむしかできなかった。
国境のそばにはハードロックカフェがあり、アメリカ的なハンバーガーなども提供されていたが、屋台の方が興味を引かれた。
パラグアイは、第二次大戦後の日本が大変な時期に、移民を積極的に受け入れてくれた国である。日本人に対して友好的な国であり、日系人社会も現在でも元気であり、農業従事者が多い。後で聞くとパラグアイ国内の肉も野菜も美味しく、特に日系人達の野菜などは美味しいらしく、食べればよかった、と少し悔しい思いをした。
さてブラジル料理というと、シュラスコは日本人にも馴染みであろう。肉を串に刺して焼き、目の前で切り落としてくれる、日本では少しお高めな食事である。
ブラジルでも様々な価格帯のレストランで提供している。我々はお寺でもご飯をいただくことも多く、何回もシュラスコは食べる機会があった。炭火で2日かけて焼く伝統的なシュラスコや、レストランで焼きが自動化されたシュラスコなど様々であった。
赤身肉だけでなく、牛の背中のコブや、鶏肉、砂肝など様々な部位を塩で食べると、肉本来の味が引き立ちとても美味しかった。この肉と、焼きパイナップル、ビール、カサーシャというサトウキビの蒸留酒を寝かせたものなどが合うのである。カイピリーニャというカサーシャとライム、角砂糖で飲む伝統的なカクテルは、40度のお酒をグビグビ飲めてしまい、これは明日に響くと自重を皆でしたくらいである。
シュラスコは、食べたい部位だけ食べればいいので、自席にお肉を持った店員さんが来ても、この肉は食べないと断らないとすぐにお腹が破裂しそうになる。勇気ある決断をしないと、食べたい肉にはたどり着かないのだ。
こう書いていると、肉を楽しんだ2週間のように感じるだろう。確かに肉は楽しんだ。適度に日系人達のブラジルナイズドされた日本食を食べていたので、ホームシックになることもなく、ブラジルの肉を堪能できていた。
ただ、身体は楽しんでくれていなかった。ブラジル到着から5日後、スタッフ一同はトイレで悶絶することになる。大変汚い話だが、切実かつ日本人である事を痛感させられたのである。
肉がメインで、野菜はあまりない生活が続くと、日本人は便秘気味になる。そしてトイレに籠もる時間が増える。25人以上のスタッフのうち、以前開教使として赴任していた2名を除き、全員がお尻の痛みと戦うことになったのだ…。
そもそも水洗トイレはブラジルにはない。拭いた紙は専用のゴミ箱に入れる。トイレ洗浄機は、お金持ちの家にあるが、シャワーを直接自分で当てるタイプで、日本のそれとは全く違う。また、紙がとてもガサガサで痛い。肉を多く食べると紙を使う回数がとても多くなるのだ。
6日目から、野菜が食べたい、日本のトイレが恋しい、と全員が思いながら過ごしたのだ…。離日の前日、携帯おしり洗浄機を買おうか迷い、大丈夫だろうと高をくくった自身を恨んだ。とにかく、肉はおいしくてもこうなると、食べるのが少し怖くなる。それでも肉しか食べるものは基本的にない。あとは付け合わせのジャガイモか、甘いケーキやお菓子、チーズくらいである。
ブラジルからの帰国の飛行機の中で、柔らかいトイレットペーパーと水洗トイレが使えたことは、何よりも嬉しかった。25時間以上の移動でも、トイレ事情が良ければ、苦でもなかった。成田空港でトイレに行った時、日本に帰ってきたね、とお坊さん達20人以上が笑顔でいたのは、端から見ると不思議な光景だったかもしれない。ただ、2週間トイレと向き合ったが故の笑顔だったのである。
これだけ辛かった、と言いながらも、帰国して1ヶ月の間にブラジル料理を食べに数回行ったのだから、胃袋はちゃんとブラジルに染まっていたのかもしれない。
そして、帰国してすぐに、携帯おしり洗浄機を買ったので、次南米に行く時は、忘れず持参して、もっとブラジル料理を堪能したい。
願成寺副住職 魚 尾 和 瑛
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